「誉」発動機を知っていますか? ほまれ?どこの地酒だ?辛口か?いえいえ、エンジンの名称です。ミリオタさんなら知っている話ですが、「誉」こそが、日本の戦後の自動車産業の礎を築いた出発点だったといえるのではないでしょうか? 旧軍の軍用機、戦闘機というと、誰もが「ゼロ戦」を思い起こすわけですが、これは皇紀2600年に制式採用されたから「零戦」と呼ばれたわけで、大戦の初期段階ではまずまずの戦果を挙げて敵国からも恐れられた存在でした。なにしろ、小型のボディーで運動性能が良く航続距離もある。当時の世界の名機というとドイツのメッサーシュミットやら英国のスピットファイアーだったわけですが、ゼロ戦の実力は、これらの名機と比べてどうだったのか? 実は、スピットファイアーとゼロ戦が戦ったことがあるんです。昭和17−18年に豪州のポート・ダーウィン攻略作戦の際に、帝国海軍のゼロ戦と豪空軍のスピットファイアーが空中戦を戦っているのです。結果、ゼロ戦の未帰還機3機に対し、スピットファイアの損害38機という一方的なゼロ戦の勝利でした。勿論、搭乗員の技量・度量が勝っていたこともあるのですが。 だが、ゼロ戦の優位性も戦争が進むにつれて薄れてくる。1000馬力の非力なエンジンでは、飛行速度が出ないし、高高度での性能が発揮できない。そこで、旧軍が望んだのが、欧米並みの2000馬力の新型エンジンの開発だったわけです。「誉」は、中島飛行機が14気筒の二列空冷星型「栄」発動機を18気筒に改造して「サイズを大きくしないで馬力を倍増」させんとした画期的な発動機だったのです。小型化にはなんとか成功したけれど、構造がフランスのシトロエン車のように複雑になって保守が難しくなり、加工製造にも技術を要する問題が最後まで付きまとったわけです。 燃料には、オクタン価の高い「オクタン価100」燃料が使われる予定だったにもかかわらず、戦況の悪化で、せいぜいオクタン価91燃料しか実際には手に入らない。そこで、水メタノール噴射装置なるものを装備して「91」でも性能発揮できるようにしたのだそうで。随分と苦労して、なんとか飛ばしていた模様です。(さて、敗戦時、旧軍には、この「水メタノール」が大量に残りました。これを市中に横流しした悪いのがいて、これを飲んだ人たちが次々と失明しました。メタノールには税金が掛からなかったので、エタノールにこれを混入させた悪者がいたのですね。) それでもなんとか量産体制が組まれ、陸軍の新鋭戦闘機、「疾風」に搭載されたりした。疾風は、米英側から日本軍の最優秀の戦闘機だったと評価されていたし、実際に、大戦末期の航空戦で米軍の新鋭戦闘機を相手に互角以上の戦果を得ているのです。「双頭の悪魔」と呼ばれたロッキードP38も、疾風には苦戦したのです。だが、疾風の性能はどんなに良くても、物量作戦で攻勢をかける米軍の前に、次第に航空隊は戦力を消耗し敗戦へと繋がっていったわけです。 戦後、日本は、長い間、航空機の製造を禁じられ、その結果、三菱重工業や中島(現在の富士重工)をはじめとする日本の航空機産業は必然的に自動車製造業へと転換していったわけです。中島や三菱で活躍した発動機技術者が、戦後、日産やトヨタ、三菱自動車、富士重工業で自動車の開発に従事し、世界に冠たる自動車産業の礎を築いたのです。旧軍の軍用機開発に携わった日本最高の知性集団が、戦後の日本の技術大国への道を切り開いてくれたわけです。感謝。 |
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知ってますよ〜。 |
考え中 2009/05/24 12:35 |
実は、新幹線の開発にも旧軍の技術者が大挙して採用されて活躍したのですよね。 |
richardkoshimizu 2009/05/24 13:54 |
朝日新聞に新幹線の始発の運転手の云々という手記がちょうど掲載されています。 |
123 2009/05/24 14:06 |
当方がバッシングされているのに、仲間だか雇われだか知りませんが「お宅の商品は法的にだめです」とかやっているのを見ると、目が点になってしまいます。 |
123 2009/05/24 18:52 |
私の好きな経済評論家の邱永漢さんが日頃から日本は |
ヘリオス40 2009/05/24 18:56 |
●政府・与党、武器輸出三原則の緩和検討 共同開発・生産を容認 |
HRSH 2009/05/24 19:05 |
日本の技術は乏しい資源という状況の元、創意工夫によって発展してますね。 |
真実を求めて 2009/05/24 19:38 |
12月3日にPDF、 |
123 2009/05/24 19:43 |
すみません。「事故」→「事件」 |
123 2009/05/24 19:45 |
http://tamagodon.xrea.jp/diarypro/diary.cgi?no=144 |
偽スカリー 2009/05/24 20:28 |
良く言われる事ですが、日本は理系=技術者や研究者、あるいは職人のレベルが高くしかも給料が安い、逆に文系は無能で高給取りだと言われます。 |
ななし 2009/05/24 22:14 |
「誉」は知りませんでした。(自動車産業の礎に驚き) |
国賊撲滅 2009/05/24 23:35 |
農業潰しに職人潰し |
大 2009/05/25 01:19 |
トヨタ、GMにハイブリッド技術供与を検討 |
richardkoshimizu 2009/05/25 05:18 |
(続く) |
richardkoshimizu 2009/05/25 05:19 |
初めましてリチャード・コシミズさん、S会の逃亡者です。 |
S会の逃亡者 2009/05/26 01:18 |
こてはんかえました、ちょっと大将にホンダのこともいってほしかったな^^量産型エンジンはたしかにそうかもしれないけど、まちのおっさんがバイクのエンジンから、独創的な発想でつくりあげたF1エンジンは、やけあとからはじまって、白人どもが、レギュレーションまでかえたぐらいすごかったんじゃない、空冷式のF1エンジンまでつくったじゃない、もうみんな忘れかけてるけどね、旧財閥系より、庶民派もわすれないでよ、焼きトン系ファン、いま栃木県さくら市にどでかい研究所を本田はつくってるよ、よろしく |
わんだーらんど孝彦 2009/05/26 04:14 |
そういえば、GMって加州のエミッション規制に対応したハイブリッド車を開発しましたね。 |
真実を求めて 2009/05/26 22:35 |
ハイブリット車もいいけど、電気自動車はもっといいんじゃ無いかな?慶応大学の研究チームが「エリカ」という画期的な電気自動車を開発してますぜ!大手自動車メーカーからは振り向いてもらってないみたいだけど。これからも、日本の環境技術に期待してます。 |
ピョンヤンギャング 2009/05/26 22:40 |
疾風は落下タンクのゴムパッキンで苦労してますね |
はやて 2009/05/27 03:57 |
三菱は、捕獲した米国戦闘機などを参考に2000馬力発動機を設計中で幻の名機烈風に搭載する予定でした。大本営の方針から中島の誉一本化が決定し、大型発動機サイズの烈風は飛ぶことが出来ませんでした。誉は可動率が悪く、比島に行くはずの疾風が50〜60機も台湾で燻ぶっていました。これは、資材不足から純正部品を使わずに代用品を使ったためです。また。戦後、電気系統をアメリカ製にしたら時速590K/h(中島の仕様書では630k/h)が690k/hで飛んだと記録にあります。なお、当時の戦闘機パイロット(ただし、ベテラン)の証言から、P38は隼、ゼロ戦で十分対抗できると判断します。問題はF6とP51で、米国製と同等の資材で誉を作っていたら疾風が制空権を取っていたと思います。 |
小説911読者 2009/05/27 20:56 |
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